コラム
新作 豊穣の女神ラクシュミー
豊穣なるかな
いのちを継ぐものに幸あれ
ラクシュミーは豊穣を司るヒンドゥー教の女神です。インドでは最も人気のある神様のひとりで、日本には吉祥天として伝わり、おなじみ七福神の女神として広まりましたが江戸時代に弁財天にその座を譲りました。
蓮華の目と蓮華の肌を持ち、蓮華の衣を纏っています。また、睡蓮の上で豊穣の壺を持っています。
壺からは金銀財宝があふれ、姿かたちの美しさとともに、いかにも現世的な御利益を象徴するものとして近代では描かれています。
私の「ラクシュミー」は豊穣のシンボルである壺に、金銀ではなく、いのちを養うものとして植物をあふれさせました。
植物は生命の源。私たちは、生命エネルギーを通じて身体も心も魂も健やかに維持することができるのです。
そして手から大地にこぼれているのは、五穀や色とりどりの花のタネです。
古代よりタネを蒔くとは感謝とともに希望を蒔くことであり、未来永劫にいのちがつながるようにという祈りでもありました。
この世のものはみな、遠い過去から未来を結ぶものとしてこの世にあらわれ、大いなる自然の恵みの中で生かされています。いのちはいのちによって養われているということをいまいちど思い出すときです。いのちの目で見る世界のなんとも美しく、なんとも豊かなこと。
豊穣なるかな。我がいのち。
豊穣なるかな。他がいのち。
いのちを継ぐものに幸あれ――